Nao Yoshioka Departure 旅立ちの理由 Vol.3 最終話
ついに3/7水曜日に大阪で初公演を控えるNao YoshiokaのDeparture Liveに関連して、
前回に引き続き、Nao Yoshioka Departure 旅立ちの理由について。
前回の記事はこちら:
Nao Yoshioka Departure 旅立ちの理由 Vol.1
Nao Yoshioka Departure 旅立ちの理由 Vol.2
アメリカに導かれる
アルバム制作活動とは別にアメリカでの活動は定期的に、意識的に行ってきました。
デビュー前の自主ツアーから始まり、2015年僕たちはThe Lightの全米リリースに成功しました。同年にはSOULTRACKSで新人賞受賞、さらにはBlue Note Jazz Club New Yorkでの公演。
そして、突然のWEBサイトから問い合わせから始まった、2016年のキャピタルジャズフェスティバルへの参加。そしてこのオファーは一度では終わらず、2017年はキャピタルジャズスーパークルーズへのオファーもいただくことができました。
これ以外にも、ブライアン・オーウェンズトのツアーを始めJose JamesやRahsaan Patersonといった素晴らしいアーティストたちのオープニングアクトをしてきました。
僕たちはこうしてデビュー前から毎年必ず、アメリカに趣き、地に足のついた方法でキャリアを着々と重ねることを積み上げてきました。
最初からメディアを大きく使っての、いわゆるメジャー的なやり方は、予算の都合上やりたくてもできませんでしたので、僕たちはこういった方法をとりました。こうした地道な活動が結果につながったことで、今ではこの方法こそが正しいアーティストデベロップメントなのだろうと、理解しています。
旅をするたびに、人々と出会い人脈ができ、定期的な露出で口コミで認知度もひろがっていきました。
その結果が、Maria Matias Musicとの契約に結びつきます。この事務所との契約は、僕らからの提案で始まり、Naoの実績や実力を元に、スムーズに契約という流れになりました。
このブッキングエージェンシーとの契約が渡米の最終決断の大きな要素となりました。でもこの契約はあくまで要素でしかないのです。
Naoの心の成長が整う
Maria Matias Musicとの契約が決まった時に、アメリカ拠点変更をすることになったきっかけは彼女の一言からでした。
「今住んでるアパートのちょうど契約更新があるんですが、次期は更新しないことにしようと思います。」
いつかはアメリカで長期的に挑戦しなければいけないと思っていたのは彼女と同じでしたが、彼女の方からその口火を切るとは思っていなかったのが本音です。実際その言葉に、僕は必然とも感じましたし、嬉しくも寂しい感情に見舞われたことはきっとみなさんと同じでしょう。
自ら変化を起こしていくこと
デビューソングのテーマのごとく、彼女はその重要な決断を自ら下しました。以前ニューヨークに修行に行った時の感情や状態とはきっと遥かに違う、自信と強い意思に裏付けられた言葉なんだと僕は理解しています。
「心の成長」
これが僕がNaoのA&Rとしての最大のテーマ。
以前からブログで書いていますが、芸術のアウトプットは、アーテイストの精神性や心の表情が体現されます。一番最初に書いたThe Lightのライナーノーツをご覧ください。
「THE LIGHT」プロデューサーズライナーノーツ 序章
この5年間、僕がやってきたこと。The Lightは彼女の暗な部分から一筋の光を見つけるという精神的なコンセプトで分かる通り、マイナスからの出発。そしてRisingは自分が光のような存在になって人々を照らせるようにという自分のなりたい姿を目指してつけたコンセプト。
彼女の心の成長に合わせてテーマを作り、成長を垣間見てきました。自分は他の人と比べて何かが足りないと思っていた劣等感をようやく乗り越え、Risingツアーが終わったあたりで、やっと普通の人が持つくらいの自信を手に入れられたように思います。
この二つのアルバム制作はNao Yoshiokaの偏見や心の枷を払うメディテーションのような働きをしました。
Risingから自身の心模様を体現することから、The Truthでは世界に対して感じることへとテーマは少しシフトします。
彼女の大きなレベルアップは、スキルや歌ではなくどれだけハートを磨くことができるか。
心の成長はステージでのパフォーマンスを、劇的に変えていきます。特にThe Truthの制作後、Capital Jazz Festあたりからは顕著に変わってきました。特に忘れられないのは2016年のビルボードライブ東京でのライブ。本人が完全に無敵モードになった特別なライブでした。
ツアーもバンドメンバーに引っ張って頂いていたレベルから、自分が引っ張って行くという意識の変化があり、それに伴って歌のレベルさらに磨かれていきました。アルバム制作やライブ制作といった様々な制作を通してNao Yoshiokaはアーティストとして着々として成長をしてきました。
一連の光景はまるで蛹から蝶に変身するような過程とも言えます。今まさに、蛹からでてきたばかりの蝶。本当に自由に飛び立つための準備が終わった過程だと感じています。
日本の皆さまへの感謝
成長を考えるのであれば、何故最初からアメリカで活動をさせなかったのか?という声が実際あります。
しかし僕は日本での活動は一切後悔をしていません。むしろ彼女の今後のキャリアへのプラスでしかないと考えています。そしてこの場を借りて前もってお伝えしようと思います。
日本のファンの皆さん、そして音楽業界に心から感謝しています。
日本という国でよかった理由。ソウルミュージックがとことん好きな方がいっぱいいました。そういう方がファンの方にも音楽業界の方にもいて、思わぬところでNaoを推薦してくださいました。
正直な話をすると、彼女の初期のレベルではアメリカにすぐには通用できなかったとおもいます。それは歌のレベルということではなく、アーティストとしての心構え、プロダクションをつくるときのノウハウ、ステージ上のプロとしての振る舞い、そう行った部分で日本でなければ手に入らなかった精神性やノウハウがたくさんありました。上述した通り、心の成長の過程で、この日本という国はNaoの成長を優しく見守ってくれたと思います。
YAMAHA MUSIC COMMUNICATIONSの荻野さんの存在、デビュー前からこのプロジェクトに賛同してくださいました。僕は個人的にもいつも背中を押してもらい、感謝しきれません。
そして松田博之さんの存在。彼の才能はNaoのキャリアには欠かせませんでした。Make the Changeという曲はいまでも世界中でプレイされる名曲です。こんな素晴らしいコンポーザーがいるこの国はまだまだ隠れた才能たちがいっぱいいるのでは?とおもいます。
日本にいらっしゃる多くのミュージシャンにも助けられました。実際Naoと僕らSWEET SOUL RECORDSとの出会いは、ミュージシャン主催のジャムセッションで僕らを紹介してくれた中村亮さん。他に名前を挙げきれないほどのサポートをしていただきました。
特にバンドに助けられました。松田さんを始め、海外で音楽を学んだ凄腕ミュージシャンたちの存在です。Fuyuさんは常にアメリカのスタンダードを理解し、Naoの価値を理解して音楽にアプローチしてくれました。Takさんは常にバンドの兄貴的なアプローチでムードをつくってくれました。岳五郎さん、みのるさんはNaoの意思を支え共にクリエイトする楽しさを教えてくれました。Yuhoくん、Mizukiちゃんは常にボーカル視点でNaoを支え、Naoをモチベートしてくれました。Toshさんは最後にバンドのサウンドを完成させてくれました。Jambaは純粋に音楽を楽しむことや、音楽の可能性を広げてくれました。そして隠れたバンドメンバー安藤さんには常にサウンド面とNaoのサポートで音を通して強い絆ができました。バンドメンバーが僕らの作る音楽を理解し、常に一緒に励み応援してくれました。
そして日本という土壌でしっかりと彼女のスタイルや音楽を詰めてきたことはアメリカの公演でもとてもプラスになっているのです。
以前も書いたかもしれないのですが、英語歌うということは歌詞重視と言われる日本ではアドバンテージにはなりません。歌詞に頼らず歌、表現だけでその意図を伝えなければいけない。日本ではある意味インストルメンタルのようなものです。その上でみなさんに感じていただくためにはどうすればいいのかをひたすら考えた日本公演でした。
結果歌詞が別に伝わらなくても音楽というものは非言語で十分伝わるという証明をここ日本でできたのです。
これは英語圏に行った時には反応が何倍にもなるということを実感しています。
まるで高山の厳しい環境で育ったトマトの方が甘いというか、気圧の低いところでマラソンをしているようなトレーニングだったようにさえ感じるのです。
さらなる成長を目指して
成長というものは時に環境にとても依存をしてしまうと考えています。Naoの歌に対する取り組みや練習量は過去僕が見てきた中で、誰も抜きに出る人はいませんでした。
自分の中を掘っていくことは、ある意味無限でもあるのですが、それと同時にアーティストは外界からの刺激も大切です。いい音楽を聴いていいものを見て、インスピレーションをたくさん受けることが必要です。それを吸って成長は加速するものではないかと僕は思います。
音楽にはボーダーがないとはいえど、僕たちが志す音楽には特徴があり、日本でいうとたまに来る海外アーティストたちの大きな公演か、六本木と青山のレストラン系ベニュー以外には、あまり出会うことができません。
アメリカやヨーロッパでまさにアップカミングというアーティストは国外にはなかなか出てくるスキームもありませんし、近い音楽性を理解してくれるような共に成長できる存在が日本はアメリカに比べ少ないのです。
日本のマーケットではできることを音楽的にはすべてやりきったということ。これは納得感があります。僕たちマネージメントとしてはもっともっと彼女に大きい露出をもってこれたのではないだろうかなど反省点はあるのですが、彼女の音楽性の成長にはこのタイミングで、世界に集中することがベストだと思っています。
今後日本でも変わらず、様々な公演で皆さんとご一緒したいのは大前提なのですが、節目というか区切りというか、本格的にあっちで勝負をするための心構えとしてのライブをしたいとおもっています。
だからこの渡米前のライブは日本のみなさんに感謝するライブだと僕は考えています。
日本のメディア・店舗の変化
最後にNao Yoshiokaが海外にでなければいけない理由、この音楽性を追求してほしい理由はそれ以外にもあります。
日本ではメディアがもう洋楽をかけることを良しとしていないという流れをみなさんご存知ですか?
今に始まった事ではないことかもしれないのですが、最近は急激にこういった動きが加速しているような気がしています。僕はお付き合いしている局のみなさんからその悲鳴を聞いているからこそみなさんに危機を訴えかけたいと思います。
店舗の洋楽部分の縮小も起こっています。素晴らしいバイヤーさんたちが次々に店舗を去っています。ストリーミングが増えたからといってその雇用は補われていません。レコード会社も国内では合併がありました。CD大国日本と言われつつも、CDの需要は下がり続けると同時に、洋楽というもの自体を扱うことの必要性が問われています。
そんな流れから宣伝をしようにも、メディアでの利用がされないことや店舗での展開をされないこともあり、日本のメジャーレーベルも本当に著名なアーティスト以外は、洋楽を扱うことを徐々に減らしています。
別にソウルミュージックがというわけではなく、洋楽自体をかけるのをやめていることに、みなさん気づいてますか?
それが日本の現在の音楽の流れなのです。人気の問題もあるのかもしれませんが、もともとマイノリティである洋楽。でも確実に洋楽を好きな人々は存在しているが、狭く深くではなく、浅く広くの方向性。
アーティストやミュージシャンの成長にとって必要な音楽の多様性が失われているのです。もちろん国内のレコード会社が生き残りをかけているいま、間接的な収入ではなく、直接的にビジネスにアプローチできるという意味で、そのような流れは当然なのかもしれません。
しかし日本のPOPシーンというのは常に海外の音楽に影響を受けて成長をしてきたことはいうまでもないと思います。どんなアーティストでも影響されているアーティストはいる。その憧れの多くは、海外のアーティストであることはないでしょうか。
目先の収益のために、音楽の多様性が失われることは、アーティストの成長に関わってくる。ストリーミングなどでどんな音楽にもアプローチできるような世の中になった今でも、双方向ではないメディアからの音楽の紹介はシーンに重要な役割であることは変わりません。
Nao Yoshiokaの世界での活躍・成功やコラボレーションが、日本へ新しい音楽の紹介につながると僕は信じています。
すべてはこの後を引き継いでいく音楽人そしてアーティストたちへ
Nao Yoshiokaの真の挑戦がこれから始まろうとしています。
僕が創設したライフサウンドという会社は3月で11期目を迎えました。3月13日でまるまる10周年。10執念ともかけると思います。 26歳から起業をしてからいままで最大の挑戦。この挑戦の舞台に立てる人たちはきっと今僕たち以外に多くはない。
だから責任が伴うことだとも感じますし、次の世代に何が残せるかを真剣に考えています。音楽人たちが世界に行く時にどれだけの軌跡、前例を作れるか。シーンにどれだけ影響を与えられるか、今後出て来る才能たちにどれだけ希望を与えられるか。僕はそんな使命感を感じています。
衰退したマーケットに必要なのはITの技術よりも何よりも、「人」つまりスターの存在です。
様々な仕組みや手法が色々と話されますが、こんな時だからこそアーティストの力を信じて、人に投資をすることが大事なのではないでしょうか。
錦織圭が日本のテニス界を盛り上げたように、きっとNaoの活躍が日本の音楽マーケットの変化に貢献する日が来る。少々大口を叩いてるかもしれませんが、僕はそう信じてこのプロジェクトを進めています。
Naoはこれから海外でさらに磨かれ、才能を伸ばして行く。そして活躍することこそが、世界から見た日本人の価値を上げることができる。そして多くの日本人が世界の基準をみることになるとおもいます。
そんな世界に出る直前のライブ、多くの方に見てもらえたら本当に嬉しいです。特に音楽を志す方に見ていただけることは本望です。
SPREAD REAL MUSICの精神。皆さんにもご理解いただければ、これ以上嬉しいことはありません。
ついに3/7水曜日、そして東京は3/28。みなさんにお会いできることを楽しみにしております。