「Rising」プロデューサーズライナーノーツVol.1
僕にとってのアルバム制作の真意

Nao Yoshiokaの2015年4月にリリースされたメジャーデビューアルバム
Rising のプロデューサーによるライナーノーツ第一弾。

テーマは「僕にとってのアルバム制作の本当の目的とは」

さて、Risingの企画はいつ始まっただろうか。
去年はいろんなことがありすぎて1年前のことをパッと思い出せませんでした。

だから企画書を作成した日付を調べてみます。
僕が企画書を実際起こし始めたのは2014年4月。

みなさんにはまだこの頃、Naoがメジャーデビューをすることは
公表していませんが、水面下でプロジェクトは進んでいました。

詳しくは:http://www.spreadrealmusic.com/column/nao-yoshioka_major-debut/

リリースするのはYAMAHA MUSIC COMMUNICATIONSから。
彼らは日本のメジャーレーベルの良心。
Nao Yoshiokaのみならず、僕らSWEET SOUL RECORDSを全面的に
理解し、応援してくれた素晴らしいレーベルです。
彼らに企画を説明するために資料を入念に作りました。
計20ページ程度。一部お見せします。

スライド1

まだ提出前のラフの目次。

 

スライド02

実際The Lightの制作は2013年11月に発売する
かなり前に終わっていたため、その反省も含めて
2013年末には、なんとなく次期アルバムの話を始めていたのを思い出しました。

Naoには年末時点で、お正月時間あるから考え始めてね!という課題を出し、
2014年に相変わらず変わった字体のメモを披露されます。

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※個人的には味があって好きになってきているけど、
漢字はちゃんと書けよと思ったりしています。

こんなメモを、20ページくらい持ってきます。
そしていつも打ち合わせをする、カフェでさらっと目を通しはじめました。

Naoは素晴らしい感覚の持ち主でいつもそこには尊敬させられます。
伝え方は下手ですが、素晴らしい材料であり
僕はその真意をしっかりと読み解いてまとめて、
企画書に反映していきます。

彼女と常に一緒に考えそれをチームにシェアをすることや、
時には突き戻すのが僕の役割。
2ページ目くらいに差し掛かった時にまず最初の一言

「やり直し。」

やり直しの理由はこの画像にあります。

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I’m worth it. = 自分には価値がある(と信じたい)
というキーワードを見て、メジャーデビューアルバムで、
来年のリリースでまだそんなメッセージでやっていたら、

「いつまでたっても自分本位で、ネガティブなままだよ」

と一蹴したのです。

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The Lightをリリースしてまだ2ヶ月。
アルバムデビューして間もない頃のNaoはまだまだ
自信に溢れるという状態でもなく、本人曰く

「やっと自分のことを人間だと思えた」

という感覚を持っていたそうです。
※まだまだ表情が幼いとおもいませんか?

The Light制作前の彼女を思い出すと、
今からは想像できないような状態でした。

僕が毎日オフィスでの仕事を終えて、家に帰り作業をしつつ
毎晩のように最低2時間はスカイプでチャットを
深夜までしていたような気がします。
そのおかげで、眠い毎日を過ごしました。

見た目からは最初は全くわかりませんでしたが、
出会った時点で、素晴らしい実力を持っていたにもかかわらず、
心底自信がなく、彼女は当時、正直不安定だったと思います。
自分が信じることをやりたい!と強く思うも
周りの目をとにかく気にして、怯えていたとおもいます。
ニューヨークから帰ってきて散々な目にあって
心が擦り切れていたんだと思います。

きっと周りから否定されたり、
自分が周りと違うことがすごい嫌だったんだと思います。
その気持は実はぼくはなんとなくわかりました。

アーティストという仕事は社長に近い仕事でもあるなと思うのです。
いろいろな側面で近いと思うのです。
とても孤独で、周りから言われる雑音をしっかりと精査し、
ぶれずに自分を貫くという点でも
最後に責任は自分が取らなければいけない。

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 「ぶれるべきではない」

という点でアーティストは優れたリーダーである必要があるかもしれません。
僕の辞書にある優れたリーダーとは
自ら実力を発揮し、人々をモチベートできる牽引型。

常にビジョンを見据え自分が目指す方向を見失ってはいけない。
ファンが多くなれば多くなるほど、自分の信じる道を明確に示して、
嘘なく突き進まなければいけない。

自分が何をやればいいかわからなくなった彼女の
10代のトラウマを考えると、この課題は非常に大きいものでした。

彼女の場合、自分の信念があるにもかかわらず、
人の言うことに耳を傾けすぎてしまい、
自分の考えとのギャップに苦しみ始める。

以前も話しましたが、フィルターが全くといっていいほどないのです。
フィルターがないということは、
人に言われたことを全部受け止めなんとかしようとするということです。

幼少期友達や近い人々に言われたことで傷付いたこと、
不安だったことがみなさんにもありませんでしたか?
コミュニケーションは時に助言にもなり時に中傷ともなりえます。

僕たちは大人になるにつれて様々なフィルターを手に入れます。
フィルターというのは、自己防衛機能とも呼べるでしょう。
「自信」もその一つだと僕は言えると思います。

人に何を言われても別に俺には関係ないなとなっていくわけです。
防御力が上がっていくのですが、
Naoの場合は防御力ゼロなのです。

これが彼女の最強の強みであり、最大の弱点でもあります。

マネージメントを始めて間もない頃、僕が常に彼女に伝えていたのは

「2年後は絶対君は変わってる。大丈夫。」

ということでした。
ご存知の通りアーティストの実力と
世間からの評価は常に比例するものではありません。
時間をかけて自ら、もしくは誰かがそれを
説明し、証明しなければいけません。

Nao Yoshiokaと出会う前に、
約3年間という少ないアーティストマネージメントの経験ながら
十分に学べたアーティストの成長のすごさ。
経験が自信となり、アーティストを支える糧となることを
僕は知っていたのです。

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その最大の成長を促すことができるのは、アルバムの制作なのです。

だからこのプロジェクトの僕にとっての最大の成功の定義は、
彼女の人間的な成長に立ち会い、それを好転させること。

音楽を通して、彼女の成長を正しく促していく。
僕はアーティストの力を信じています。
彼らの最大限を嘘なく発揮させてこそ
真の成功がそこにあると強く感じるからです。

この真の意図を理解していただけると、
今まで僕がとってきた公演の理由、ステップなど
理解していただきやすいかもしれません。
一つ一つ考えて、アーティストの成長に合わせて
綿密に考えてキャリアをつくっているのです。

近年、アルバムの意味や価値がデジタルの単曲購買が増え
薄れてきています。アーティストの中にはシングルを出し
それでジャッジをされ、終わってしまう人もいるようです。

自分のアーティスト性を整理し、今の自分を表現し、記録する。
そうして制作を通して更に成長し、次のステージに。
常に進化し続けるアーティストの工程としてアルバム制作は非常に重要な工程なのです。

思えばデビュー当時にもこんなことを言っていました。
アルバム制作において自分が大事だと思っていることは
Nao Yoshiokaという一人のアーティストが人間として成長をして、
彼女の感じることを表現するための一番いい方法を提案し続けること。

こうして前作のThe Light同様、コンセプトを重視して企画が進行していくのです。

それでは次回、The LightからInto the lightへ。
次回は、代官山LOOPで行われるRising Japan Tour 2015のKick Offの直前
9/10に公開いたします!

是非皆さんキックオフにお越しください!

Let’s SPREAD REAL MUSIC

 

※ツアー全容はこちらから
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