「The Truth」プロデューサーズライナーノーツ Vol.2
The Beginning of A New Chapter

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※写真は2016年1月の福岡のDon’t Miss itから

この記事はツアー開始前に書き始めて、
インストアライブ、ラジオ出演、そしてツアーリハーサルなど、
あっという間のリリース週を経て、
名古屋への移動をしながら書いてたんですが、
すっかりツアーも終盤戦。

なんとか東京ファイナルまではThe Truthへの
全ての思いを皆さんに打ち明けてから、
最高のショーにできればと思っています。

各記事によって、ボリュームが異なりますが、
今回のアルバム制作における自分的ハイライトを
記事にしていこうと思いますので、ぜひご覧ください。

前回のライナーノーツ
「The Truth」プロデューサーズライナーノーツ Vol.1ボーダレスな感覚
に引き続き、コンセプトについて
お話をしたいと思います。

 

Naoからシェアされたコンセプト

いつものカフェで彼女と待ち合わせをして話を始めます。
具体的な話をする前に、感覚的な話をまずしました。

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結論からお話すると、僕が考えていたことと、
彼女が考えていた一番のテーマはかなり一致していました。

まずは感覚的な部分であるボーダレスというキーワード。
彼女の場合は僕が感じていた新しい感覚を、
2015年のB.B.KINGの公演の時点で感じていたというエピソードを共有され、
もうそれ以上は特に話すことはありませんでした。

多くの同じ瞬間に立ちあって、
やはりそこには僕らの新しい感覚があり、

そこにはポジティブな真実は顕在したのです。

満場一致で、ボーダレスな感覚を詰めた
コンセプトをカタチにして、表現していくことを決めました。

そして彼女からシェアされたノートはこれでした。
※相変わらずなかなかのクオリティです笑

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次の作品のコンセプトは ” Experimental / Eye Opening “

本質的、本物の音を聞いたときに、自分の根元の感情に帰る事ができる。
「何て素晴らしい世界に生きているんだと気がつく、思い出す」

<EPのキーワード>
-Eye Opening
-Beyond
-A New Age
-Wake up

<イメージ>
人種、言語、国境、いろんなボーダーがあるけど、そこを越えていく
だって私たちは本当は深いところでつながっている存在だから。
本物の音楽が根元の力を思い出させる。
今までの常識ではない出来事が起こる時代が来ていて
その新時代の音が人の目を覚まさせるものになると思う。新時代の風!

<なぜこのアルバムを作りたいのか>
次のNao Yoshiokaの展開を考えたときに、
もうすこしネオソウル寄りのアルバムを作ってみたいと思った。
それも目に見えない力(音楽の力)が私たちをつないでくれて、
ボーダーを超えるという神秘的な部分を表現したいから、
ネオソウルの持つ神秘的な部分が合うと思う。

<メモ>

音楽の方向性は今までと少し変えてずらしてもいいんじゃないかなって思います。
少し変わった事をチャレンジする回で、全てトラックで作ってみるとか、
特別号として特化したコンセプトアルバムにしたい。

スライド09

概ね良い感触でした。
かなり具体的に、2018年までの予定を考えつつ、
今回のアルバムの位置づけを入念に考えた上で、
彼女に説明をしたかったため、
同時並行で、事前にパートナーであるYamahaさんにもう提出資料を用意してました。
こんなものを見せながら話をすると、彼女が目を輝かせます。

僕も一安心し、これでアルバムも3枚目
彼女がどんな歌詞を書き、
曲をカタチにしていくかなと僕も楽しみになりました。

一旦アイデアもまとまり、自分の役割も明確になり
今後の行動が読めたと思ったのは束の間、
予想していなかったことを彼女から伝えられたのです。

 

より広い範囲での主体的なプロデュース

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「The Light、Risingとやってきましたが、
今回私のテーマの一つとして、
山内さんのプロデュースの領域をもっと深くしてくれませんか?

今回やろうとしているネオ・ソウルは山内さんの一番好きな領域で、
SWEET SOULが最も得意とする音楽ですよね?
山内さんの創るアルバムのビジョンを私は見たいです。
Risingを経て、私がわくわくすることは、
いままでやってきたことではなく
未知なる領域に挑戦すること。
過去2作から振り切った面白いことがしたいんです!」

未知なる領域への挑戦

前述したとおり、Naoの可能性を
探ってみたいと思っていた僕にとっては
願ってもない発言でした。

スライド10

以前のアルバムも曲単位ではそういう曲がありました。
例えばForget about Itや、Awakeと言った曲です。
Naoがあまり挑戦したことのない領域を僕は過去から
挑戦してもらうことを継続してきました。

その延長で今回はアルバム全曲特別編。
自分の可能性を引き伸ばすために、
より多くのアイデアをシェアしたいということだったのです。

嬉しくもあり、とても責任が伴うことだなとも思いました。
彼女が自分に伝えてきたことは、
「補助」から一歩はみ出た部分だったのです。
それはNaoだけではなく、自分のメッセージも
曲に吹き込むということであり、
彼女のアーティスティックな領域でした。

光栄なことではありましたので
もし自分が出したアイデアに対して、
彼女が気を遣わずに、純粋に自分のために判断をするなら
惜しみなくアイデアを出すというふうに伝えました。

僕が第三者の視点から見ておもいつく
彼女のインスピレーションや
目の前に広がる世界の出来事などを題材に0から一緒に
考えることにしました。

そして改めてですが、アルバムを作る意義に立ち戻ります。

http://www.spreadrealmusic.com/column/risingvol-1/

彼女の人間的な成長のために僕は何が今回できるだろうか。

既に擦り合わせていたコンセプトや重要なポイント以外に、
僕は更に追加で彼女に提案を続けました。

 

制作における大事なプロデュース方針

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僕が最初に彼女に提案したキーワード

あえて歌わない

“歌唱力”が彼女の素晴らしいところでもあるという
認識はもちろんあるのですが、
表現を技術で覆い隠し、
完全武装をしているようにも感じていました。

アメリカで身に付けたゴスペルなマナーを
僕は一回封印して、技術で固められた鎧を外して、
才能を新たに発掘することを提案しました。

歌い倒す以前に、僕は彼女の声や表現に
可能性を感じていたためです。

そして次のキーワード

過去からの離脱

僕はNaoのアルバムプロデューサーとして、
レトロスペクティブなものを追求するのではなく、
曲は古くても、マナーやサウンドを新しくしたり、
どこかしらただの過去の黄金期を追い求めるようなことは
しないように、進化を続けるソウルミュージックを
自分たちの感性で、追い求めてきました。

なので一度今までのプロダクションの延長という考えを捨て
まだ見ぬ新しい可能性にかけて、
恐れず挑戦していこうというふうに話しました。

そして最後はこれです。

メッセージソングを中心にしたアルバムにすること

メッセージソングを中心にしたかった理由は、
ヴィンテージなソウルやゴスペル・R&Bを歌う
ソウルシンガーという枠ではなく、
アーティストとして時代に
必要なメッセージを伝える本来の役割に
引き戻したかったという意図がありました。

 

一番最初に声をかけたプロデューサーはもちろん…

こうして、コンセプトがしっかりと固まり、
一番最初のプロデューサーにコンタクトをとりました。
いうまでもありませんが、この人。

松田博之さん、今回Borderlessという曲を手掛けてくれましたが、
アルバムで最も最初に込めたかったメッセージを、
彼に依頼をしました。

3

Make the Changeの生みの親であり、
NaoバンドのMD。日本でネオソウルのトラックを
世界基準で創れる貴重な存在であり、
僕らが音楽的にとても信頼し、理解がある人。

Naoの音楽を語るには絶対に欠かせない人です。

実は、松田さんはNaoがソウルトラックスの
新人賞の受賞時には、電話で激励をしてくれて、
その次に会った際には、花まで用意をしてくれるほど
喜んで下さった人の一人です。

その時彼は一言、Naoをはっとさせるような一言を
告げたのですが、その発言が後にNaoの
意識を変えることになることは、
このときはまだ誰も知らなかったのです。

制作開始時、Naoと一緒に説明資料を綿密に意思を統一して作ってから
彼に送ったメッセージはこれでした。

松田さん、
この曲は、SWEET SOUL RECORDSの初のオリジナルMake the Changeの続編であり、今までは変化を起こしていこう!というメッセージであったのですが、その後進化を続け、「もうすでに変化が起きて新しい風が吹いている」という状態を表現するような曲にしたいです。
僕ら(松田さん、僕、Naoなど)20代〜30代の新しい感覚を表現するものにしたい。そう思ったきっかけはアメリカやオランダツアーで、人種や年齢を越えて、純粋に良い物を作ろうという音楽の姿勢を肌で感じることができました。
そして松田さんの曲で僕たちは世界が本当に近いということを感じることができました。
音楽業界は、低迷しているという過去からいる人の概念、日本人だからSOULはできないというステレオタイプやテレビで日々取り上げられる差別の歴史は、もう既に僕達の中では終わっていて、そういった過去の人達の考えを一掃して新しいことを始める時代。
今まであった差別や立場、固定概念はもう忘れられて、音楽で全てはつながっているという経験を感じられる強いビートとみんながワクワクするようなコード進行を期待します。
真実は、”今”を生きる僕達が持っている。過去に縛られず、歴史が持つ綺麗なもの、過去のもの、人づてに聞いて知ってるけど、そんなもは全く関係なく”今”を生きる僕達だから見れるこの時代にあった最高のアンセムを創りたい。
その新しい音が新時代を気づかせてくれると思うのです。

The Beginning of A New Chapter

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こういったテーマに合わせ
3月に決まっていた代官山のループのライブは
彼女のいつもやるような楽曲を徹底的に封印していきました。
90年代以前のオールドスクールなものは全て排除したのです。

The Beginning of A New Chapter

新しい章の幕開けです。

2016年の年始は、新しい気持ち、新しいコンセプトに心躍りました。
そして次のプロデューサーに会うために僕たちは
渡航準備を始めたのです。

それでは次の記事をお楽しみに。

 

今回も長文にお付き合い頂き、
ありがとうございました!

今週11/2はThe Truth Japan Tour 札幌公演
そしてThe Truth Japan Tour Finalまであと、3週間。
是非まだご予約がまだの方は、ぜひチケットをご購入ください。

チケット詳細はこちらから

[Nao Yoshioka The Truth Japan 2016]

札幌公演 11/2(水)
cube garden 011-623-5555
詳細はこちら→ http://bit.ly/2eqr36s

東京公演ツアーファイナル11/24(木)
赤坂BLITZ 0570-550-799
詳細はこちら→ http://bit.ly/2eqr36s

[ライナーノーツ]

「The Truth」プロデューサーズライナーノーツ Vol.1 ボーダレスな感覚
「The Truth」プロデューサーズライナーノーツ Vol.2 The Beginning of A New Chapter

過去のライナーノーツ

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