「The Truth」プロデューサーズライナーノーツ Vol.1ボーダレスな感覚

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みなさんお久しぶりです。
アルバム発売までついにあと数日となってしまいました。

このライナーを読む前に、もしよければ
以前のライナー
もぜひ読んでみてください。

今回もアルバムはいつもどおり色々なハードルが立ちはだかりましたが
こうしてご報告のブログをかいているということは、
いいものができたということだと思います。

さて、マスタリングが終了したのは8月10日前後。
それまではスタジオに通う日々と
海外とのやり取りに翻弄されていました。

10日以降はリハビリというか、
今やっと自分の中で今回の制作を整理し、
エネルギー充電ができた状態です。

今回も出来る限りアルバム制作での裏側、
僕達が感じた、多くの感動をここで
みなさんにお伝えできればと思います。

夢の序章の終幕、新たなるスタートライン

この動画はRising Japan Tour Tokyo Finalのものです。
怒涛の13箇所、自分も久しぶりに見ましたが、
その時の思いが蘇ってきました。

Rising Japan Tourを終えた2015年、
ツアーの終わり頃、アルバムについて少し
話したことを覚えています。
僕はNaoにこんなことを言われました。

「新しい挑戦をしたい。未知なる自分を表現したい。」

きっと13箇所の公演を経て、
本人なりになにか手応えがあったのだと
僕はその時は理解しました。

少し落ち着いてから、
制作における良かったところや反省点を
いつもどおりまとめ、その意見交換を行いました。

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RisingはThe Lightに近い方向性で更にブラッシュアップした
メジャーデビューとしてのNaoの自己紹介的なアルバムだと
位置づけています。

このメジャーデビューの挑戦としては
彼女がThe Lightでは見せなかった
王道なゴスペルバラードの楽曲Dreamsが含まれました。

それはThe Lightリリース前に訪れたNYでの
ゴードン・チェンバーズとの出会いで起きた奇跡や
彼女の精神的なネクストレベルを表現するには
必要なプロセスだったのです。

今までは苦楽のうちどちらかと言うと
”苦”をテーマに歌ってきたNaoが
人間的にも精神的にも成長をし、
愛や夢について語ったのがRisingです。
タイトル通り、日の出のように自ら光り輝くような存在に。

そのメッセージに合わせて慎重に
音楽のスタイルを選んでいきました。
彼女の大好きなソウルやファンク、ゴスペルといった過去の遺産に力をかりて
正しくメッセージと音楽を融合させました。

そして僕は彼女の成長を考え、
今までしてきたことで一番得意なことを
最大限に引き出していきました。

そしてアルバムリリースから、
フィラデルフィアからバンドを呼んでのブルーノート東京、
心の繋がったチームとのビルボードライブ大阪でのアルバムリリースパーティ、
鮮烈なBBKingでの全米デビュー、そして怒涛の13箇所のツアーを経て
Nao Yoshiokaはまた一段と成長し、夢の序章を終幕しました。

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このタイミングで僕にとっては、一人のアーティストとして成長したNaoは
とても頼もしく、その成長は自分の想像を超える部分もたくさんありました。

これは自分がデビュー前に、不安定だったNaoを見て、
「きっと3年後には成長し、立派なアーティストになる」
とおもったまさにその姿と重なっていました。

ここまではある程度描けた結果。

やっとスタートライン

夢の序章の終わりには、
そこから新たに始まる壮大な音楽の旅路が
待っていました。

アルバム構想を改めて練り始めます。

音楽ジャンル的なものはさておき、
まずこのアルバムでNao Yoshiokaは
何を伝えるべきなのかということを考えました。

一番に思いついたはこのテーマでした。
ぜひ次の動画をご覧ください。

ボーダレスな感覚

Nao Yoshiokaのマネージメントの始まりは
世界への旅から始まりました。

僕たちはここ数年アメリカやオランダなど
世界をツアーし、人種や年齢を越えて、
音楽を通して伝えきれないほどの
感動的な瞬間を目の当たりにしてきました。

余計な垣根を取り払い純粋に
「良い物を作ろう」という音楽の姿勢を
肌で感じることができました。

僕が個人的にそれを完全に受け入れ、
噛みしめることができたのは
この写真の瞬間、この時が一番の経験だったかと思います。

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(2015 After Blue Note New York Show. Men behind Nao Yoshioka)

Nao Yoshiokaというアーティストを通じて、
様々な人が彼女のメッセージ・音楽のために集い
その最高の表現をチーム一丸となって目指す瞬間。

そこには何の隔たりもなく、
とても純粋に人と繋がった感じがしたのです。
この感覚は自分にとってとても新鮮なものでした。

音楽のためにみんなが最高のショーをするために、
興奮と感動、胸の高鳴りの連続がありました。

だから

テーマは僕達が旅で見つけたポジティブな”真実”

このきっかけは僕らの新しい感覚を表現するものにしたい。

 

ポジティブな真実をテーマに

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真実と命名したのはアルバム制作が始まった
少しあとになりますが、それには理由があります。
真実と言う言葉は二面性が有り、強いワードです。
僕らはあえてその言葉を選びました。

2014年ファーガソン。アルバム制作の直前
忘れもしない事件が僕達の渡米直前におこりました。
その時の様子はこれです。

http://www.spreadrealmusic.com/column/heal-ferguson/

メディアがどんどんとネガティブな話題を持ち上げる中、
現地は結束して、なんとか一丸となろうとしていました。

今でもアメリカで起こっている人種問題。

僕らにとって家族のような存在のブライアンが住む地域で
実際に起こった問題について自分は考えさせられました。

メディアではどうしてもネガティブな方向でどんどんと脚色され、
物事が広まっています。ネガティブな力はほんとに強い。
そういった事件が起きたことも、人々が知るべきことも
必要だとは思いますが、そういった悲報だけじゃない。

僕達が感じた根源的な感情、何の隔たりもなく純粋に人と繋がった時の胸の高鳴り、
そういった素晴らしい体験も実際に世界中では各所で起こっている。

こういった事実、ポジティブな真実の側面や感覚を伝えたい。

僕はこの感情で色々な過去からある偏見や
刷り込まれた考えを拭い去ることができました。

今まであった差別や立場、固定概念はもう忘れられて、
音楽で全てはつながっているという経験を感じられる力強いビートと
可能性にかけたワクワクするようなアルバムをつくること。

真実は、”今”を生きる僕達が持っている。

過去に縛られず、今”を生きる僕達だから見れる
この時代にあった最高のアンセムを創りたい。

“過去や固定概念にに縛られない”新しい感覚。

このキーワードが僕の脳裏からはなれなくなりました。

 

Stay or Evolve

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テーマに合わせ音楽性を選ぶことを考えました。

Risingからの反省点はいろいろとあったので、
そこをしっかりと潰していけば、
まだまだ伸びしろはあるしRisingのスタイルを継続しても、
もっといいものを作れるという自負はありました。

アメリカで学んだ、ソウル・ブルース・ゴスペル・ファンクは
彼女が修行時代の大半を費やし、最も得意な領域です。

メジャーデビュー後の2作目、
反省点をブラッシュアップし、
新たにアイデアを加えるという
一度は自分の中で考えたことでは有りました。

しかし、、、

安易すぎる考えなのではないだろうか。

今胸に持つ新しい感覚と果たして、
本当にマッチする音楽なのだろうか。

著しくルーツに偏った音楽をさせることが
果たして長期的に彼女にとっていいのだろうか。

違和感は募るばかりでした。

その理由とは、デビュー曲Make the Changeで見せた
彼女のまだ見ぬポテンシャルでした。

Naoにとっては全くと言っていいほど、
未知の領域となったこの曲は
SWEET SOUL RECORDSのレーベルテーマとして、
新しい感覚、メッセージを込めた曲。

この曲のメッセージを彼女に預けることによって
未来を自分で描いていくことを
学んでもらう1曲でもありました。

僕自身が世界を完全に意識して
新しい感覚とメッセージに
取り組んだ作品でもありました。

結果、世界各地どこにいっても、
一目置かれる曲であり、
アメリカでは未だにラジオで
日々プレーされているという事実。

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(アメリカの友人から送られてきた、Facebook動画)

彼女が初めてトライしたこの楽曲が
未だに一番印象にのこる曲であり、
世界でも必ず反応のある楽曲なのです。

今までネオソウルという音楽性は
アルバムの比率的にはとても低く、
彼女にはフィットしにくい領域かもしれないと
自分自身も考えていました。

でも未知の可能性を見てみたい。
世界の人々が共感し、聴いたことのないサウンドに挑戦したい。
僕はその時のメモにこのように書いています。

新たなる可能性への挑戦。実験。
オールドスクールをなぞるやり方から、
新しい物をクリエイトすることにシフトする。
Make the Changeで開いた
Nao Yoshiokaのポテンシャルを再度追求するプロジェクト。
コンセプチュアルなアルバムを作りたい。

正直なところ、僕はもうこの時点で、
今まで培ってきた手法で制作や
それをブラッシュアップしてくものの作り方に
可能性を感じていませんでした。
だから全てを一度ヒックリ返して考え始めました。

これがツアーを終えて、一段落したときのことでした。

そんなときに自分の考えを更に
後押しするような朗報が届きます。

アメリカで起こった変革

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SOULTRACKSの最優秀新人賞へのノミネート。

2015年のThe Lightが評価され、
予想もしない結果を招いたのです。

もう世界は本当に近い。

過去にノミネートされたアーティストや
その他の賞には錚々たる名前が連ねていました。

2015年の僕たちはアメリカの成果は、
期待した以上のものなりました。

  • Blue Note NEW YORKでの単独ショー
  • SOULTRACKS 最優秀新人賞の受賞
  • Soultrainにて注目の新人に選出
  • アメリカ首都のフェスCapital Jazz Fesへのオファー

プロジェクト発足から変わらない
変革を自ら起こしていくというコンセプトに、
真実という感覚を加えたテーマに合わせた
音作りをしていきたい。

進化無くしては、通れないテーマを設定することになる。

Nao Yoshiokaとアイデアのシェアする

アイデアはより具体的に、いわゆる本格的な
メジャー2枚目を出す前に、
実験的な作品を創っておくのはどうだろうか。
というところまで自分の頭では進行していました。

ビジネスを考えると、ある意味掛けのよう
作品になる可能性もあることだと思います。

ただ僕たちはビジネス重視して考えて
今まで作品を創ったことはなかった。
それは自分たちにとって魂を売るような行為であり
ぼくらの存在意義はそこにはない。

こんなことを考えていた矢先に
Naoからアルバムについての話がありました。

この話を聞いて、自分は驚きを覚えたのです。

次回に続く

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