「RISING」プロデューサーズライナーノーツVOL.6
責任を取るということ 東京での徹夜の日々

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時刻はツアーファイナル当日である24:30。
どうしてもこのブログを更新したくて、悪あがきをしています。

やっとここまでたどり着きました。今日の投稿を入れて6話が完結します。

THE JOURNEY OF RISING  〜アルバムの7つの隠れたストーリー〜

「RISING」プロデューサーズライナーノーツVOL.1 〜僕にとってのアルバム制作の真意〜
「RISING」プロデューサーズライナーノーツVOL.2 〜THE LIGHTから INTO THE LIGHTへ〜
「RISING」プロデューサーズライナーノーツVOL.3 〜アメリカでの悪夢〜
「RISING」プロデューサーズライナーノーツVOL.4 〜アメリカでの悪夢2〜
「RISING」プロデューサーズライナーノーツVOL.5 〜チャンスに導かれるという発想

オランダ帰国後は、シャーマとフレッシュカッツを迎えた
Make the Change Project 2014 Japan Tourが控えていました。
海外からアーティストを自社でツアー招聘する初の試みです。

この時点でアルバム制作は本当ならば、アメリカとオランダの
レコーディングを終えて、ツアー後にじっくりと
松田さんと一緒に創る曲とミックスに挑むはずが、
制作予定曲16曲、収録予定13曲に対して進捗は

ブライアンの 4/4曲
ゴードンの 3/3曲
クエンティン  0/1曲
オランダ  2/6曲
東京 0/1曲

合計ベーシックな録音ができていた曲が9曲。
この時点の目標は13曲。

作業量に関しては楽器から(つまりゼロから)のレコーディングが4曲、
ボーカルをとる曲が6曲
コーラスを入れる曲が10曲、ホーン・セクションやパーカッション、
それに加え、エディット、ミックス、マスタリング
気が遠くなるくらいの作業が待ち受けていました。

そのため頭を抱えながら挑むライブツアーになりました。

NAO YOSHIOKA & SHIRMA ROUSE東京公演まであと4日♫皆さん!名古屋公演も終わり、ツアーも残すところ東京公演と北海道公演を残すのみとなりました!(≧∇≦)私にとってはじてめての日本ツアー、本当にたくさんの方に来ていただくことが出来て感謝してもしきれません(;_;)皆さんありがとうございます!そして、東京、北海道の皆さん!最高に盛り上がりましょうね!!(≧∇≦)️今日は大阪公演のムービーを公開したいと思います(≧∇≦)舞台裏や、LIVEでの様子!皆さんに伝わったらうれしいです♫(*^^*)東京公演まで、いよいよカウントダウンです♫——————————Nao Yoshioka & Shirma RouseMake the Change Project World Tour 2014——————————-東京公演 11月24日http://ny20141124.peatix.com/北海道公演 11月26日http://ny20141126.peatix.com/

Posted by Nao Yoshioka on 2014年11月21日

 

オランダから最高のアーティストたちを迎え
御存知の通り、僕たちは大阪、名古屋、東京、札幌を経て
素晴らしい動員実績と、ショーを創ることができました。

このメンバーとの制作が続くため、
ツアー中に少しは話せるかなと思っていたのですが、
進めるか相談する時間もあまりなく、
ツアーはあっと言う間に時間が過ぎてしまいました。

帰国後、やはりシャーマは多忙を極めます。
そんななか彼女の周りで悲しい出来事が起きてしまいました。
それに覆いかぶさるように今度は彼女のアルバムツアーが始まってしまいます。

ツアーの大変さや時差などで
なかなかシャーマと連絡が取れず、
そんな日々が続き、遂に連絡が途絶えてしまいました。
ここには様々な感情が行き交いました。

もうこの体制では続けられない。

アドバイスをもらいながら進めたかった曲、
作曲中で止まってしまっている曲
必要だった楽器をすべてオーバーダビングしていない曲

彼女に任せていた曲に関しては
謎に包まれたまま、僕が全て引き継ぐことになりました。
後でわかったのですが、彼女はその時

オランダであえて離れていた期間の制作が
すべて自分に戻ってきたのです。

録り終えてない曲に加え、
録ってある曲もファイルやレコーディングの意図が
わからないような状態で自分に全ての重圧がかかってきました。

とにかく動かなければ。不安は行動でしか解決されない。

僕は気持ちを切り替え自分の使命を受け入れます。

苦渋の決断もありました。
ほかに予定していた仕事をキャンセルし、
アルバムを何としてでも完成させなければいけない。
リリースが刻々と迫っていました。

オランダに一人で飛ぶか、Naoを連れていくか
日本のメンバーを集めてレコーディングをするか
それとも・・・・

悩んでいたところに
僕の状況を知っていたブディが連絡をくれます。

彼は僕に素晴らしい提案をくれました。
スタジオ録音をほぼリアルタイムで高音質で聞ける
ストリーミングを用意してくれました。

一気にミュージシャンに声をかけ、
協力を求めます。フレッシュカッツ達も
状況を理解してくれて、信じられないほどの
協力体制をつくってくれました。

オランダとの時差は8時間。日本が先行しています。
そのため僕は日本での仕事が終わった20時頃、
あちらは正午のタイミングで、レコーディングが始まりました。

レコーディングが終わるのはだいたい朝の4時頃。

意識もうろうとしながらもなんとか
指示をしつつ、音を聞き、その状況をなんとか打破しました。

楽器類はすべて録り終えた。

11月のツアーが終わり年末12月に差し掛かる時点で、
予備費さえ底をつき、制作費用はもうほぼなく、
時間もなく、余裕もなく。ピンチでした。

ここでまたもや人に救われます。

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僕を救ってくれたのはニラジでした。
できたばかりの人気スタジオのスケジュールをなんとか
調整して快く使わせてくれました。
彼は僕のレーベル創世記からの戦友であり、
僕が関わる、制作物に何らかのカタチですべて関わってくれています。
ここで改めて彼に感謝の意を表したいと思います。

スタジオに入ってまずしたことは、
レコーディングを終えた素材の整理や
それぞれの一番いいテイクを選ぶ時間、
これも本来ならオランダですべて終える予定だったものが
多数あり、想定していた時間の2倍以上かかると予測できていました。

スタジオワークは、なかなかしびれる仕事です。
一つの小さい部屋にずっとこもりきり、なんどもなんども
音を聞き直して、クオリティを高める作業。

こんなわけで僕の年末の日々はすべてレコーディングスタジオで迎えることになりました。

気力と体力の限界に挑戦した日々、
付き合ってくれたエンジニアさんには本当に感謝です。

緊急事態を察してくれたYAMAHAさんは僕達を気遣い、
いいものをつくってほしいからという理由と
Naoをトッププライオリティで一番いい時期に出したいのでと、
予定していたリリースをずらしてくれました。

そんなお言葉に甘えて
何度も何度もやり直し、
繰り返しいいモノを作ることを目指しました。

すべて録り終えたのは12月29日。
リリース予定は迫っていました。

ミックス作業もこだわりにこだわりました。
これはデータでのやり取りで、
締め切りギリギリまで詰めました。

特に大変だったのはニューヨークのサウンド。
理由は前述したとおりです。
最も信頼しているブディとブライアン・オーウェンズのミキサー、
トニーにもおねがいしました。The Lightと同じ構図です。

トニーは予想もつかない面白いアメリカ人らしいダイナミックなサウンド。
ブディはヴィンテージ感溢れる心地よいサウンド。

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このミックスチェックの作業は、SWEET SOUL RECORDSのスタッフ
西井さんが大いに才能を発揮し、彼なしではくぐり抜けられなかったというほど
サポートをしてくれました。 今度彼を見かけたら話しかけてください。
SWEET SOUL RECORDSの音の番人です。

※本人無許可画像です。

ミックスが終わり、マスタリングが終わったのは
本当に入稿の直前でした。
最後の最後までいろいろ波乱がありましたが

なんとか間に合った。

窮地に多くの人がぼくに手を差し伸べてくれました。
人生においてこんなにストーリーに溢れる経験は
もしかしたら今までないかもしれません。

話し始めたら終わらないほどの
エピソードがあります。

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こうして多くの方に支えられRisingは
世に出る準備ができたのです。

 

今回のアルバム制作は、自分の度胸試しというか、
自分自身の存在を再定義させられたような感覚がありました。

自分の音楽への関わりを
根本的に変えられる取り組みとなりました。

あえて入らなかった音楽の現場への、
創作作業への入り口でもありました。

自分が本当に音楽の根幹まで関わることへ
今までどこか恐れていました。

それが今回は必然的に導かれ
実行することになりました。

最初はNaoの成長をと考えていたのですが
実際やってみて自分が成長させられていたことに気付きました。
きっとこれがプロデューサーの醍醐味なのかもしれません。

自分が持っている力をすべて出し切ること、
自分に可能性がないことに恐れて出さないことは
本当にはいいモノを作れない。

オランダで受けたレッスンでした。

持ちえる感性をすべてつかって、それを活かして、
自分のできることを最大限にやりきる。

Naoというアーティストのために、
自分ができることは全部やろうと腹をくくることで
僕は成長ができたのです。

さて、最終章に行く前に、簡単に曲紹介をしましょう。

Awake

Naoに依頼されて僕がプロデュースというカタチではいって
松田さんと一緒につくったAwakeという曲は、
実はまさにぼくの実体験を曲の方向性に入れたものです。

Make the Changeと同じメンバーで、制作をしました。

この曲こそ、オランダと日本での経験を基に
コンセプトをつくりメッセージを込めた一曲です。

自分の才能を最大限に使うこと。
恐れず踏み込んでいくこと。

タイトルの由来はAwakening、「覚醒」です。

Just Go

実は1曲、リード曲作りがかなり難航し、
近しい曲を集めたり、ライティングセッションをしてみたりしたんですが、
なかなか結果として表れず、意図した曲作りをすることができませんでした。
そんな時にサルが書いてきてくれた曲が絶妙によくて、
別の使い方としてアルバムに採用しました。

言い方は良くないですが、御託は並べずに
とにかくやるから見ててよ。
そんな曲です。

Forget about It

Certifiableに引き続き少しロックテイストな曲をアルバムに入れては?
というアイデアをもらい、ストレートにロックをやるのは
全く考えてなかったので、自分の大好きなGo Goで
ライブの最後に15分くらいずーっとみんなが踊って
Grooveできる曲をつくってしまえということで
自分がスタジオに入り、細かいところまで指示をして
ドラマーのサルと制作した曲です。

いつも過去のことに囚われているNaoに
そんなこと全部忘れちまえ!といつも声をかけるので
そこからのエビソードを得ています。

Never Had Love Like This

クエンティン・ムーア作詞作曲。
なおがかねてから歌いたかった胸キュンラブソングを1曲。

この曲は本当はセントルイスで録ったにもかかわらず
作曲者のクエンティン本人のタイミングが合わず、
ディレクションできなかったこともあり、
クエンティンが自分のスタジオで録り直して
送ってきてくれて、やっとしっくりきた曲。
ホーン・セクションが最高です。

次回最終話。Rising Japan Tour 2015ツアーファイナル当日の更新となりますが、お楽しみに。

過去の記事はこちら

THE JOURNEY OF RISING  〜アルバムの7つの隠れたストーリー〜

「RISING」プロデューサーズライナーノーツVOL.1 〜僕にとってのアルバム制作の真意〜
「RISING」プロデューサーズライナーノーツVOL.2 〜THE LIGHTから INTO THE LIGHTへ〜
「RISING」プロデューサーズライナーノーツVOL.3 〜アメリカでの悪夢〜
「RISING」プロデューサーズライナーノーツVOL.4 〜アメリカでの悪夢2〜
「RISING」プロデューサーズライナーノーツVOL.5 〜チャンスに導かれるという発想

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