オランダのネオソウルシーンに築かれるDIY精神と強い絆

本日はパリからブログを書いております。MIDEM終了後、カンヌからパリに移動してから3日間、体調をすっかり崩しまして、今日やっとPC復帰する事が出来ました。MIDEMの様子なども追ってブログにアップしていきますが、忘れないうちにオランダの素晴らしい音楽シーンについて書こうと思います。

 

SWEET SOUL RECORDSから既に6タイトルものオランダ人のアーティストがリリースをしています。

Shirma Rouse

Secret Rendezvous

Mary Davis Jr.

Rayn

Ntjam Rosie

Sacha Vee(発売はNew zealand )

明らかにオランダは良質な音楽が生まれている国と言えます。

アーティスト性ももちろんなのですが、アーティストを取り巻く人たちのクリエイティビティやレコーディングの質の高さなども僕たちが現在付き合っている15カ国のアーティスト達と比べても高水準にいると言えます。しかし統計的なデータを考えると人口はたったの1700万人。僕にとってオランダは本当に興味深い国であり、今回こうして訪れる事によってその真相を知る事が出来ました。

おそらく僕がここに書くオランダはこの旅を通じて最もクールな人たちと出会い、その一部を垣間みたことを断片的にかくことにすぎません。でもそこにきっといろんな答えを見出せるはずです。

 

オランダってどんな国?

ここ最近海外に行った中で僕はオランダが最も気に入りました。オランダの後にフランスになんて来てしまうと、正直嫌でたまりません。。僕の印象はこんな国です。

衣:アムステルダム、ロッテルダムみなさんお洒落です。もちろん僕が会ったアーティスト達はみんなとってもお洒落でした。素敵な雑貨屋を発見したのでここに写真で紹介。

食:オランダ料理っていうのは食べてないんですが、Shirmaにつれていってもらったレストランは全部◎でした。

飲み物が安い!ビールは2ユーロとかで飲めます。

住:椅子が高い。トイレの椅子さえ高い。さすが平均身長180cm以上。。衛生的で町も駅も綺麗です。海外の人に対してオープンな印象を受けます。交通機関は非常に発達していて、PASMOのようなシステムがあります。そして驚いたのは行く場所ほぼ全てにWIFIが飛んでいて、ネットに困りませんでした。町並みもだいぶ素敵です。また、かなりの人が普通に英語を話します。また英語を話す事に全くためらいが有りません。これもかなり、外国人的には心持ち楽です。

またご存知の通り、他の国では許されないような事も許しているオランダはとても自由度の高い国でもあります。それはそれぞれ個人に自由をあたえることにより、その分責任もしっかりととることを求められています。たとえば電車にしても日本のようにバリケードのような改札口はなく、ちゃんと買っているという前提で、ゆるい改札口が有ります。もちろん見つかったときには重い罰則があります。こうしてオランダの人たちは必然的に自己責任を課されているのです。

音:衣・食・住ときたら次はもちろん音。オランダは前述したように多くの人がバイリンガル、もしくはトリリンガル以上でオランダ語と英語を公用語としています。そのため、もちろん自国の音楽はあるようですが、洋楽に対してオープンで、JAZZやSOULといったジャンルは日本よりはよっぽど受け入れられやすい土壌が有ります。自国でリリースをするアーティストも大半が英語だそうです。またどのアーティストも口を合わせていうのですが、オランダは国内でどれだけすごい事をしたアーティストよりも、実力は関係なく海外から来たものに重きを置くそうです。

 

それでは本題に。

 

 教育と音楽の密接な関係がアーティストを支える

オランダの音楽はなぜこの少ない人口にも関わらずレベルの高さを誇るのか、其の一つの答えとして、発達した音楽教育機関があります。現地の人に聞くところによると、Conservatory(コンサーベトリー)という音楽学校である教育機関が国内に30箇所以上もあります。うろ覚えなのですが、たしかドイツかベルギーには2箇所しかないと聞きました。こう考えるとオランダの30個はかなりの数ですね。僕が出会ったアーティスト達はほぼこのConservatory出身でアーティスト活動を続けながらこのコンサーベトリーで、授業を持ったり、プライベートレッスンをしています。またアムステルダムやロッテルダム周辺にあるヴェニューも音楽に溢れ生演奏が聞ける場所が多く、日々ジャムセッションが繰り広げられています。そのギグやセッションの大半がコンサーベトリー出身者によって繋がっているのです。

 

アーティストを支える理想的な仕組みを国、町がもっている、素晴らしい環境と言えます。

 

独立精神とアーティスト達の強い絆

オランダのアーティスト達はとてもインデペンダントである。

ぼくはこう言い切りたいと思います。やれることはとにかく自分でやる。という精神が根底から有るような気がします。僕たちがディールをするアーティスト達はどの人たちもマネージメントがついていてもおかしくないレベルに有りつつも、個人でばりばりやっている人が多いです。もしかしたらアーティストよりも、音楽ビジネスを志したりマネージメントを志す同世代の人々が日本と同様に少ないという事実もあるかもしれませんが、「自分でやる」”Do It Yourself”精神がかなり根付いています。

この精神はアーティストを支える回りの人たちも同様でおそらくオランダという国が持つ一つの人格なのではと思います。

Shirma Rouseはその一人であり、日本にも実はキャンディー・ダルファーのバックアップシンガーとして来日していますし、グレゴリー・ポーターやタニア・マリアといったみなさんがあっと驚くようなアーティスト達とも関係を持っています。

今回のオランダ渡航はShirma Rouseにお願いして、とあるプロジェクトを実現するために現地に来ました。彼女にお願いした経緯は、SSRからリリースした彼女のファーストアルバムがレーベルにおいても、市場においてもとても評価が高く、彼女が実現した音が今回のプロジェクトにばっちりあったためです。つまり、作曲・作詞、レコーディングやミックスまで全てにおいてレベルが高く、非常に興味を持ったのです。

Shirmaに直接いろいろとお願いをしたので、全ての物事がとてつもないスピードで進みました。またアーティストと、とても近いところで仕事ができました。いつも日本で仕事をするときはどうしてもレーベルは法人であり、なんとなくミュージシャン、アーティストと隔たりが出来てしまうのですが、それを完璧にとっぱらってコミュニケーションをとれたことが一番僕にとって新鮮な取り組みでした。

オランダは1700万人しかいない国。世界中でバックアップボーカルとして素晴らしい音楽を聞いていたShirmaにとって、良い人を国内で探すのはとても難しかったそうです。ただ偶然にも、Budyという素晴らしいエンジニアに出会えたことで僕も愛してやまない、Chocolate Coated Dreamsが出来上がったそうです。

良いプロダクトを創るには、アーティストだけの力では実現する事が出来ません。僕たちにニラジ・カジャンチのような素晴らしいエンジニアがいてくれる事と同様に、彼らもまた素晴らしい人々に恵まれています。

今回一緒にレコーディングに挑んだエンジニアBudyはもともとはミュージシャンであり、ミュージシャンとして日本にも来た事が有るそうです。そしてShirmaやSecret Rendezvousの音源のレコーディングやミックスを手掛けたエンジニアです。

彼はRussell ElevadoというAlicia KeysのFallin’やD’AngeloのVoodooや最新アルバムのミックスをしているエンジニアと一緒に作品創りをしているオランダの隠れスーパーエンジニアとでもいいましょうか。先日もクリス・デイヴと一緒にレコーディングをしたそうです。。

「自分がとりたかった音をオランダでは誰も録る事が出来なかった。だから自分でスタジオを始めてとるしかチョイスがなかったんだよ。」

とあっさり語ってくれましたが、自宅にスタジオを自分で創り、エンジニアをするなんてそんな簡単じゃないと思うんですよね。そのクリエイティブな才能はスタジオの各所に現れています。シンガーソングライターであり、Budyの奥さんであるiETが一緒にプロデュースをしています。

自宅スタジオ2階。いろんなミュージシャン、関係者がここにあつまってわいわいします。

自然光がたっぷり入るスタジオ。

おいてあるアイテム達が、まるでフォトスタジオのようにお洒落です。町並みもとてもお洒落なのですが、いい音楽は聞く事に限らず、見る事によっても 培われているのだと思います。こういったつながりがシーンをささえています。

個々の強いインデペンダント精神をもっているからこそ、交わったときにはマジックがおきる。

まるで、厳しい環境で育ったトマトが甘いように、オランダのアーティスト達は、常に自分たちで工夫を重ね、センスを研ぎすまし、良いものを創り上げるのです。その研ぎすまされた個々が交わった時、非常にレベルの高いものになります。実際ShirmaがBudyと出会ったのもここ何年かの話で、お互い知り合ったときにはものすごいスピードで打ち解け合ったそうです。スタジオワークをみていても、Shirmaはロジックを操作し、Budyはボーカルコーチも行います。ほぼ全員が音楽において高水準の知識を持ち、同じ言語、同じレベルで話しているため、コンフリクトはおこらないのです。

この人口の少ないオランダで自分の資本とコネクションだけで自分の創りたいもの、一緒にやりたい人を探すのはとても難しいのではないかと思います。

でもマイノリティだからこそ、共鳴し合ったときの絆は強い。

これは僕たちがやっていることにも同じ事が言えますね。どうしても商業的なことを考えると、マスへのアプローチを考え音楽やアーティスト性さえ変化をさせなければいけないのが世の音楽ビジネス。僕たちのコンセプトは、マイノリティでも世界規模であれば、いっぱいでしょ!という考えです。時間はかかるだろうけど、それが一つのカタチになれば、絶対にまねが出来ないものになる。

そして其の新しいリアクションが既にオランダでもおこっています。

写真の手前はSacha VeeとShirma Rouse。ほかにもRaynやSecret Rendezvous、BudyやiETといったオランダにいるアーティスト達が、僕らのために駆けつけてくれました。また僕らを通して、国内でもつながりがなかったアーティスト同士をコネクトすることができました。SWEET SOUL RECORDS MEET UP in the Netherlands です。

今回のオランダ渡航では、音楽に携わる人間として、本当に学ぶ事が多い旅となりました。また音楽カンファレンス、MIDEMの報告も続々として参ります。最後に体調を崩して、もう若くないんだぞとマイケルにいわれつつも、若さをアピールできる写真にて失礼します。(写真はブレ気味です。)

 

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