豪華客船の音楽フェスCapital Jazz SuperCruiseのレポート Vol.2
-アーティストが成長をする環境とは-

リハーサル終了後のクルーズ2日目の深夜には
ロバート・グラスパーとクリセット・ミッチェルの
公演の直後からロバート・グラスパーが
ホストを務めるジャムセッションが開始します。

ジャムセッションがあるのは知っていたのですが、
キャピタルジャズプロダクション側からは、
参加してくれると嬉しいと書面に記載されているだけで、
どうやって参加するかよくわからず、
今日参加したいんだけどどうすればいいの?と事務所に行って
聞くところから始まりました。

「わかった!言っておくね。多分大丈夫」

とスタッフに言われるも、
アメリカの流儀はなんとなく把握をしていることもあり
おそらく自分たちで動かないとだめなんだろうなーと
会場に早めに向かいます。

予想は的中し、Naoが紹介される様子もなく、
グラスパーがセッションを始めるのですが、
明らかに著名なアーティストや、
つながりのあるミュージシャン達が、
ステージ正面からバックステージに入っていきます。

グラスパーが門番のように手招きをし、
バックステージに入れる?みたいな絵です。

みるみるとステージが埋まっていく中、
もちろん僕たちはつながりもありませんでしたので、
あれーこれ参加できんのかね?
という疑問を持ち始めた時に
救世主が現れます。

そうRCが現れNaoをステージに連れていってくれました。
そしてロバート・グラスパーに
Naoのことを紹介してくれたのです。
僕は撮影のセッティングがあったので、
バックステージには行けず、
その様子はMCPの会報誌かシークレットライブにてじっくりと
Naoに説明してもらえばと思います。

ロバートのジャムセッションは
シンガーのセッションというよりは、
ミュージシャン主導のジャムセッションでしたが、
その後ロバートは早いタイミングで、
Naoをバックステージからステージに招待します。


Naoはもちろん実力を発揮し、会場の反応も十分。

歌い終わった後のたくさんのミュージシャン達から
称賛の声をかけられ、
そのひとりであるロバート・グラスパーとも
この時に話すことができました。

結局セッションが終わったのは午前2時半を周り、
就寝は午前3時半でした。

クルーズ3日目、起床してレストランに向かうと、
歩くたびにNaoが声をかけられます。

「昨日のジャムセッション見たわ!もうあなたのファン!」

こんなこともあろうかと、
僕はすかさず、このクルーズのために作っていた
Naoのプロフィール入りのフライヤーを配ります。

その日からこれが何回も続き、
船内を移動するたびに声をかけられました。

そしてついにNaoの公演を迎えます。

エリック・ロバーソン主催のアンダーグラウンドラウンジ。
キャピタルジャズによって厳選された
アーティスト達をエリックが紹介するというイベント。
客船上にあるもっとも大きな会場、
ブレイカウェイシアター。

おそらくキャパシティは二千人くらいでしょうか。
エリックがホストでオープニングが始まり、
他にも3人のアーティストが参加しましたが、
ついにNaoが紹介されます。

「今日は東京からアーティストが来てる、
しかも僕は彼女と東京で11月にショーを一緒にするんだ。」

そしてNaoがステージに。
会場の雰囲気は深夜にもかかわらず、温まっている感じ。
その雰囲気で、Naoは渾身のオリジナルソングを披露します。

最後に歌ったRiseが終わりグッと息を飲んだ瞬間
会場は大喝采に包まれます。
歌い終わるとエリックが靴を片手に持って
Naoに投げる振りをして出て来ます。

僕はいつも通りカメラ片手に
客席側からのその様子を捉えていました。

 


この動画はその場に居合わせた、Kay-Taさんという
ミュージシャンがツイッターにあげてくださっていたものも
貼り付けさせていただきました。

そう。会場を完全にロックしたことは言うまでもありません。

大成功。

ちなみに余談ですが、みなさんこの写真で
Naoが裸足なことに気づきましたか?
実は公演中に靴を突然脱いだのです。

靴を脱ぐという行為は、
女性アーティストが本気を出すときに
する行為で、ダイアナ・ロスもレイラ・ハサウェイも
たまにステージで見せるとか。

実のところ、クルーズが直近のハリケーンの影響で
思ったより揺れていて、ヒールのままだと歌えないと
判断して脱いだというのは裏話です。

公演の次の日から歩くたびに声を
かけられることはもちろんなのですが、
クリセット・ミッチェルのバンドメンバー、
カークフランクリンのバンドメンバーなど
ミュージシャン達がNaoの歌を聴いて
続々と声をかけてくれるようになりました。

その中の一人に、インディア・アリーのプロデューサーでもある、
シャノン・サンダースにも声をかけられます。

たまたまリハーサルルームに彼が訪れた時でした。
Naoがたまたま歌っていると、

「君はマネージャーか?あの子は一体誰なんだ?」

というところから始まります。
僕は彼女を紹介し、自分のことも説明すると

「君がSWEET SOUL RECORDSのオーナーか、
やっと会えたな!知人から色々と話を聞いてるんだ!」

と共通の知人の名前が出て、話は盛り上がりました。
ネオソウルが好きな人は一度は耳にする
名プロデューサー。言うなれば自分にとってのヒーローの一人です。

このディスコグラフィーを見れば、
きっとみなさんも納得でしょう。

彼を始め、自分が地球の反対側から
音とクレジットだけで接していた人々に直接出会う毎日。

普通のフェスティバルと違い、
7日間海の上で同じ場所にいますので、
一度ではなく複数回会って、
その度に声を掛け合い関係性は深まっていきます。

こんな濃密な時間を過ごし、
友人になったミュージシャンが参加するショーや
ワークショップを見たり、キャピタルジャズが主宰する
テレビインタビューを受けたり、
ジャムセッションに参加したり、
自分たちのワークショップの準備をしたりと
忙しい毎日が続きます。

そんな忙しいながらも感じたことがあります。

Naoが本当に楽しそうに目をキラキラさせていること

同じ音楽を志す仲間がいる、
ライバルが近くにいる。
そして自分が感動する音楽が身近にある。
さらには世界で活躍するトップスター達の
公演を間近でみることができて、
彼らとも交流ができるという
願っても無いシチュエーションです。

本当はこうあるべきなんだよな。

まだまだある伸び代を、同じシーンのアーティストたちの
姿を身近に見て吸収したり、影響しあって成長させていくこと。

音楽に垣根はないとはいえども、
マーケットの約85%がJPOPの日本で、
そこをなんとかSWEET SOUL RECORDSは
変えるべく動いているとはいえ、
国内で世界基準で音楽を続けることは
生易しいものではありません。

自分たちがやっている
音楽が生まれた本場のアメリカで、
多くのリスナーに素養がある中で
音楽をするということはこんなにも伝わるのか。。

Naoがより多くのアメリカの人々に
知ってもらえる日は予想以上に
近い将来かもしれないと実感します。

僕はいつしか遠征を重ねてこういう反応を見るたびに
日本での公演・活動はある意味
もっともハードルの高い公演なんだなというふうに
考えるようになってきました。

まるで空気の薄い高山地帯で
トレーニングをしているような
感覚にさえ思えるのです。

日本では言語の壁や音楽性の壁などある中で
これだけたくさんの方に応援してもらえるということは
ある意味、とても特別なことなのだと。

そしてファンの方が多様性を受け入れ
歌詞先行の音楽市場で、
純粋にNaoの音楽を楽しんでくれてることは
とても幸せだと感じました。

こうした日本での積み上げがここアメリカの大きな舞台で
高く評価されるようになってきていることは事実であり、
日本でだからこそきめ細かくできた
楽曲アレンジ、ステージの作り方、演出など含め、
日本での活動が活かされていると実感できているのです。

十数枠しかない小さなブッキングのスポットに、
本場のアーティスト達を差し置いてNaoが呼ばれ
評価を受けているということは確かなのです。

成功事例がない中で手探り感を楽しむ。
新しい扉を今までのやり方とは全く違う方法で僕たちは開いていく。
次々に開いていけばいくほど、手応えは増しているのです。

そして今を生きる僕らマネージメント、レーベル業で忘れがちなこと。

アーティストが最高にインスパイアされて成長する環境を与える

なんとかこういう機会をマネージメントとして
増やし、キャリアの可能性を
常に大きく捉え現状に満足しないようにしなければと
痛感したのでした。

次回は旅の終盤、僕らのワークショップについて。
お楽しみに。

Nao Yoshioka with Special Guest Eric Roberson
日程:2017年11月18日(土)
時間:OPEN 15:00 / START 16:00
会場:ミューザ川崎シンフォニーホール
料金:SS席6,000円 / S席5,000円 / A席4,000円 / B席3,000円
出演者:Nao Yoshioka(vo) / Eric Roberson(vo) 他

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