MIDEM2013レポート後編〜参加メリットはあるのか?〜

前回MIDEMへの参加理由をご説明しました。今回は実際のMIDEMで感じた事を綴ります。いままでブログを書いたなかで一番賛否両論かもしれません。日本の一音楽レーベルの一人の意見ですので、きわめて主観的かもしれません。ちなみに、テックサイドのレポートは素敵なブログをgetstageの鈴木さんが書いていらっしゃいましたので、こちらからご覧下さい。

どんなかんじ?

75ヵ国3000社が集まるといわれるこのミデムですが、まず第一印象として、テックサイドをのぞいて、そんなに力入れて仕事をしに来てる人は少ないということ。みんなお祭り気分というか、ほぼ毎年同じメンツで、同窓会のような雰囲気さえ感じました。カンヌに遊びに来ちゃおうかなって言う人に溢れているような気がします。。

それはそれでとても素敵なことなんですが、そんな慣行もあって、音楽業界の世界的な売上な減少と一緒にこのMIDEM毎年規模が小さくなっているとの事です。フィジカルからデジタルのシフト音楽がのっかるIT企業の未来は明るい、そしてブースやプレゼンテーションにも活気が溢れます。既存の音楽ビジネスは陳腐化をたどり、規模を小さくしながらおなじことのルーチンが繰り返されているのようなかんじです。なんだか、音楽業界の縮図の用な気がしました。

とにかく元気だったのはKPOPという印象。MIDEM開催中、同時に別会場では今話題のガンナムスタイルのPSYも来ていたようで、とにかく注目はKPOP。それでも音楽大国日本は他の国に比べてブースも多く、各メジャーメーカーは商談をせっせとしている印象でした。日本のブースのスクリーンでは、アイドルとビジュアル系がひたすら流れこれが日本の象徴ですと言わんばかりのどやっぷりだったのと、日本の音楽業界のプレゼンテーションでも音楽出版協会の関係者の方がまるで自分の功績のように、AKBをはじめとしたアイドルコンテンツの好調さを流暢な英語で説明していました。

マクロに見れば日本の音楽業界の売上は数字的にはのびている。それは事実ではあるのですが、J-POPの売上とは裏腹に、洋楽やその他のジャンルは結構なパーセンテージで減少しているんですよね。次はまたなにか新しい流行が今回のように売上を救っていくのかどうか。CDがうれない時代に、複数購入をしてしまうような秀逸な販売手法が再度適応できるようなビジネスを継続できるのか?オーバーグラウンドのシーンではこういったことが焦点になるのではないかなーとざっくりと感じました。

また印象に残っていることとしては、SAKEパーティ。日本はどこかの国に、何百億も金利無しであげちゃうくらいとってもジェネラスな国と人達なので、初日には鏡割りをしてSAKEをふるまい、連日18時頃になるとお酒とおつまみがブースで振る舞われました。商談に訪れた人たちは大喜び。ブースはもちろんいろんな国の人々に溢れました日本の音楽協会、そんな余裕あるのー?!と心で思いつつ、新米音楽レーベルの僕たちはそれを目の前に、とにかく商談を進めます。

歴史もなく、本当にせまい領域で勝負をしている三角形の底辺にいるような僕たちインデペンダントレーベルには、会場の雰囲気に合わせてまったりできるわけがなく、この環境で改めて危機を感じ、必要以上にアポイントを増やしとにかく成果を出すために、動きまくりました。

何をやってたの?

とにかく商談、商談、商談。成果が即時にでるものではないので、営業マンとしては焦るので、既に取ってあったアポ+飛び込み、あとブースにどんどん訪問きてくれるので、有意義なアポと判断したら、追加で商談を入れる。3日間それの繰り返しです。夜には多くのライブが行われたみたいなのですが、ご存知の通り僕たちが興味がありそうなライブはなかったのと、夜はバタンキューが大半でした。

 

何がよかったの?

MIDEMに参加してよかったこと。大きく3つあります。それを解説していきましょう。

普段会えないような新しいひとのつながりが出来た。

MIDEMの特徴である、全世界から音楽業界の人やテックの人が集まるという意味で、今回出来た人とのつながりはとても貴重だと思っています。

まずは商談相手である、ヨーロッパ、アメリカ方面、そしてアジアのレーベルや配信会社の人たち。わざわざ出張してやってくる人は、少なくともマネージャー以上の人が多く、具体的な話になりやすいことが特徴。

印象的なのは日本でも今話題になっているSpotifyさんとのミーティングをさせて頂きました。会社の戦略や、日本におけるレーベルとの関係性など詳しくお伺いする事が出来きました。きっと日本ではメジャーレーベルの最後の最後に後回しにされる僕たちのような小さなレーベルでも、MIDEMにいく事によって比較的早めに最新の音楽配信会社の情報とコネクションをつかめた事は大きいです。音楽業界は極めて属人的な業界のため、キーパーソンとのコネクションは欠かせませんからね。

写真は思わぬ高校の同級生との再開。ビートロボというユニークなサービスを展開し、MIDEMでもファイナリストに勝ち上がり、素晴らしいプレゼンテーションをしていた浅枝くん。右は全くジャンルは違いますが、レーベルとしてご参加していらっしゃったムーンシャインの鈴木社長です。

 

成功している会社のロールモデルを見る事が出来た。

JETROさんの支援もありフランスのかなり有力なマネージメント会社やレーベルと引き合いを頂く事が出来ました。 またオランダ大使館の方にも紹介頂いた、オランダの優良音楽レーベルにも会いました。パリでは会社を見学にいく事も出来ましたし、成功している音楽会社の経営者と話す事により、成功する共通点の用なものを感じる事が出来ました。

ニッチに強く共鳴し合う

僕たちにとって今回初参加のMIDEMに挑むにあたって、より精度の高いアポイントを獲得するため、事前に提供されたリストをもとに、実際に商談を進められるだろうと思われる商談先を絞り込みました。そしてとにかくアポイントを取る。でもまず、そこで気付いた事なんですが、僕たちのような音楽を扱っている人たちは他のジャンルに比べて比率的にかなり少なかった。SOUL、FUNK、R&Bというキーワードがなかなか見つからなかったのです笑

これは参加決定をし、MIDEMに参加料金を支払った後に調査が可能な事項で、僕たちの渡航前の不安材料の一つになったのですが、結果的には数が少なくても成果を得ることはできました。目的が明確なため、アプローチをしたきた会社達、またはアーティストは僕たちを同じ想いをして、話を始めると水を得た魚のように、お互い話がスムースに進んだのです。

 

結局意味あったの?

当初目的であった、”アーティストを売り込みつつ、世界各国それぞれのパートナーを探す。おまけにエンジニアまで採用してしまおう!という下心付きです。”のうち、アーティストの売込みに関しては、実際海外のマネージメント会社やライブブッキングエージェンシーの方とポジティブに話が進み、現在進行形です。そして世界各国のパートナーに関しても、ヨーロッパとアジア領域での流通に期待ができそうです。エンジニアさんを見つけるのは困難だったんですけどね。。

ある程度成果は見えたものの、収益が発生するところや、具体的に目に見えるような成果は引き続き時間がかりそうです。なので意味があったかなかったかは今後の僕たちにかかっています。ちなみに今回僕たちがMIDEMに参加することに決めた大きな要因は、JETROさんの支援でした。支援内容は無償での、商談コーディネート、JAPANブースの利用、現地情報の提供、その他手厚い支援があります。重要なアポイントの大半はパリ在住の超敏腕コーディネーター、山田蓉子さんとJETROのスタッフの方々の御陰です。もしこのブログを見てご興味をもたれた方がいらっしゃるのならば、JETROさんの支援を受ける事を強くお勧めいたします。

 

最後に

今回の旅、2週間の旅程に休息という予定を1日もいれなかったという誤算と、度重なる商談で最終的にはパリで体調を崩したわけなんですが、そのなかでもMIDEMのダメージは大きく、商談にはかなり集中力をやられたり、無駄なアポイントに時間を取られることもあり疲労がたまったのですが、そんな疲れも吹っ飛んだできことがありまして、「あぁ、おれはこのためだったらがんばれるんだなー」と思ったことがありました。

そうなんです。結局、素晴らしいアーティストが僕たちを探して合いにきてくれたことが僕にとっては一番嬉しいことだった。今後SWEET SOUL RECORDSからリリースを期待できる合計4人ものアーティストが、わざわざFACEBOOKなどを使ってコンタクトして会いにきてたり、飛び込みでプレゼンをしてくれました。それぞれ個性があって、なかにはIPADやMACBOOKでプレゼンをしてくれて、ビジネスマンよりよっぽどクリエイティブで、見せ方も工夫されていました。そんな会話の中でアーティスト性やその人の思考などを理解するチャンスであり、それがどのように音楽に反映されているかを感じれることが僕にとってはとても楽しいことなんですよね。良い音楽、素敵なアーティストと出会ったときには、本当に疲れなんか吹っ飛んでしまいます。

僕たちは歴史も浅い、まだまだ力不足なレーベルです。アーティストがしっかりと活動を続けられる生態系を創ることを常に考えていますが、それにはやはりセールスが伴わなければ還元することができません。世界の成功している先輩方から常に学び、歴史を塗り替えられるよう、積極的にテクノロジーや海外を視野に入れて活動をしていく2013年の始まりにふさわしい渡航となりました。現在も続いているMIDEMから生まれた取り組みに今後もご期待ください。

最後に再度御礼を。クールジャパン政策の一環で”日本のコンテンツを海外に”と真剣に取り組んでいらっしゃるJETROの皆様には商談のコーディネートや現地情報、様々なサポートをして頂きました。僕たちのような小さなレーベルでも本気で取り組んでくださった、コーディネーターの山田さん、そして平井さん、橋本さん現地スタッフの上田さん、心から敬意を表します。

これからも日本から生まれる新しいレーベル、音楽を世界に広める活動を国として支える取り組みが今後も継続し、大きくなっていく事を願っております。

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