『self』のプロデューサーズライナーノーツも、今回が最終回です。
ここまで、アルバムが生まれた背景や、一曲一曲の制作について書いてきました。最後に何を書こうかと考えたとき、作品の解説ではなく、15年近くNaoと一緒に歩いてきた僕が、今感じていることを正直に残しておきたいと思いました。
『self』が完成して改めて感じたのは、ここ数年のNaoの成長です。
もう15年近く一緒に仕事をしていますが、本当に別人になったと思うほど、彼女は変わりました。
変わらないところは歌や音楽というアートに対して、どこまでも純粋で、誰よりも真剣に向き合っているところ。誰よりも努力し、誰よりも意志を強く持ち、人を引き込み、魅了し活動を続けています。
少しでも良い音楽にしようと最後まで考え続け、常に世の中に自分が信じるポジティブなメッセージを込めようとする。その姿をすぐそばで見てきました。

アーティストとしての才能はもちろんですが、一人の人間として、僕はNao Yoshiokaを心から尊敬しています。そして、彼女と今も一緒にものづくりができていることを、本当に幸せに思っています。
『Flow』から『self』へ
『Flow』
『self』
振り返ると、『Flow』から『self』へと続く3、4年間は、とても濃密な時間でした。この二つのアルバムは別々の作品ですが、僕の中では一つの流れの中にあります。
コロナ前、僕たちには、いつか一緒に音楽を作りたいと思っていた世界中のアーティストやプロデューサーのリストがありました。当時はまだ、実現するかわからない夢のような名前もたくさんありました。
コロナ禍を経て、もう一度世界を行き来できるようになり、僕たちは実際にその人たちを訪ねました。かつては一緒に仕事をすることを夢見ていた人とスタジオに入り、同じ音を聴き、アイデアを交わし、一つの曲を完成させていく。
そんな時間が、一つひとつ現実になっていきました。この連載で書いてきたように、すべてが思いどおりに進んだわけではありません。
実現しなかったコラボレーションもありました。納得できるところまで曲を仕上げるため、長い時間をかけたこともありました。
それでも、世界中の素晴らしい才能と本気で向き合い、自分たちが心から良いと思える音楽を作れた。『Flow』と『self』には、その3、4年間に起きたことと、Naoの変化が、そのまま刻まれていると思います。
もっともっと活躍していていい

これほど素晴らしい作品を作れたことを、僕は誇りに思っています。
その一方で、このブログを書きながら、ずっと心に引っかかっている気持ちがありました。
Naoは、もっともっと活躍していていいアーティストだと思う。
これだけの才能があり、これだけ真剣に音楽と向き合い、今も成長を続けている。
もっと多くの人に聴いてもらえるはずだし、もっと多くの人にライブを観てもらえるはずです。僕はこれまで、プロデューサーとしてNaoと一緒に音楽を作り、レーベルとマネジメントの立場から、その活動を支えてきました。
でも、彼女の才能を多くの人へ広めるという面で、自分が十分に貢献できているかと聞かれたら、正直、自信を持ってそうだとは言えません。
そのことを、とても歯がゆく感じています。作品やライブの素晴らしさに対して、まだ届けられていない人がたくさんいる。
その距離を埋めるのは、自分の仕事でもあると思っています。
世界で育ってきたもの、日本で続けてきたもの

先月のヨーロッパツアーでは、Naoの音楽が各地の人たちに本当に愛されていることを、改めて感じました。アメリカへ行けば、長年Naoを応援してくれているファンがたくさん待ってくれています。そして日本には、活動を始めた頃からずっと支えてくれているファンの皆さんがいます。

簡単ではない時期も、変わらずライブへ足を運び、音楽を聴き続けてくれた皆さんには、心から感謝しています。

同時に、日本を拠点にしながら英語で歌い、世界に向けてSoul Musicを届けていくことには、想像していた以上に高い壁があるとも感じています。でも、その難しさを理由にしたくはありません。
僕たちが何を目指しているのか。どれだけ真剣に音楽と向き合っているのか。世界でどんな挑戦を続け、どんな音楽を作っているのか。それを自分の言葉でもっと伝えていくことは、僕の務めだと思っています。
今回、このライナーノーツを書いたのも、そのためです。
今のNao Yoshiokaを、ライブで観てほしい

10月18日からWORLD TOURの日本公演が始まります。そしてSMASH社の力添えのもと、東京・LIQUIDROOMのステージに立ちます。この公演には、アメリカでNaoと長く演奏してきたバンドメンバーが来日します。
ギターのDai Miyazaki、キーボードのAaron Hardin、ドラムのTreWay、ベースのJay Bratten。彼らは、Naoが世界へ挑戦してきた時間を支え、一緒にいくつものステージを作ってきた、大切な仲間です。
フィリーバンドとのライブには、いつも特別なエキサイトメントがあります。音源をそのまま再現するのではなく、メンバー同士がその場の音に反応し、曲が思いがけない方向へ広がっていく。
その中で、Naoの歌からも新しい表情が引き出されます。同じ曲でも、その日にしか生まれない瞬間がある。それがライブの一番面白いところだと思います。
今回の公演に来てほしいのは、ただチケットを買ってほしいからではありません。15年近くそばで見てきた僕が、心から信じているアーティストの今を、一人でも多くの人に観てほしいからです。
『self』に刻まれたNaoの成長も、この数年間に世界中で築いてきた仲間との関係も、ステージの上ではすべて音になります。これほど素晴らしいアーティストがいることを、もっと多くの人に知ってほしい。
いいものを広めていかないことは罪であると過去に僕が会社のメッセージにした通り、今のNao Yoshiokaを、ぜひその目で見て、身体で感じてほしいと思っています。
15周年と、その先へ

『self』が完成し、僕の中では、もう次に作りたいものが見えています。
もちろん、今はこのアルバムを携えてツアーを続け、各地でライブを届けていくことが一番です。でも同時に、来年迎える15周年に向けて、これまでのNao Yoshiokaが何を大切にしてきたのか、そしてこれから何を目指していくのか。その両方を改めて定義するような作品を作りたいと思っています。
Naoと一緒に15年近く世界を目指し、音楽を作り、届ける仕事を続けてきました。
その中で学んだことや得た経験を、これからはほかのアーティストやクリエイターにも還元していきたい。
良い音楽を作るだけではなく、それを作り続けられる環境や、世界へ届けるための道筋も残していきたいと思っています。
歯がゆさは、今もあります。
それでも、自分たちが心から良いと思えるものに時間を注ぎ、Naoという才能と一緒に、今もワクワクしながらものづくりができる。
この環境を、できるだけ長く続けていきたいと思っています。
15年近く経った今でも、次に作りたい音楽があること。
それを一緒に作れる仲間がいて、僕たちの音楽を待っていてくれる人たちがいること。
これほど幸せなことはありません。
こうして活動を続けられるのは、長い間、僕たちを信じて支えてくださっている皆さんのおかげです。
本当に、いつもありがとうございます。
それでは会場でお会いしましょう。
SPREAD REAL MUSIC!
『self』プロデューサーズライナーノーツ
VOL.3 『Yet to Come』—叶わなかったコラボレーションが教えてくれたこと
VOL.4 全曲解説・前編「Changes」から「All I Wish」まで
VOL.5 全曲解説・後編「Inner Universe」から「Shelter」まで
Nao Yoshioka “self” World Tour 2026 日本公演
福岡|ROOMS
2026年10月18日(日)
OPEN 18:00 / START 19:00
ROOMS
福岡県福岡市中央区大名2丁目1-50 大名ONOビル 3階
前売 6,000円/当日 6,500円
別途ドリンク代
東京|LIQUIDROOM
2026年10月21日(水)
OPEN 18:00 / START 19:00
LIQUIDROOM
東京都渋谷区東3-16-6
前売 6,900円/当日 7,400円
別途ドリンク代 600円
Special Guest:BOXER
Band:Dai Miyazaki(Gt)/Aaron Hardin(Key)/TreWay(Dr)/Jay Bratten(Ba)
大阪|Yogibo META VALLEY
2026年10月22日(木)
OPEN 18:00 / START 19:30
Yogibo META VALLEY
大阪府大阪市浪速区難波中2-11-1
前売 6,500円/当日 7,000円
別途ドリンク代
札幌|札幌近松
2026年10月23日(金)
OPEN 18:00 / START 19:00
札幌近松
北海道札幌市中央区南4条西14丁目1-32 札幌パームビル
前売 6,000円/当日 6,500円
別途ドリンク代