「self」プロデューサーズライナーノーツ VOL.1 2013年から続く、世界への挑戦

7月17日。Nao Yoshiokaにとって6枚目となるアルバム『self』がリリースされました。

このアルバムは、僕たちが14年間続けてきた世界への挑戦が、一つの形になったアルバムです。今日から『self』についてここに綴っていこうと思います。

たくさんのお祝いのメッセージありがとうございます。みなさんの応援もあって、早速アメリカのNPRでThe Best Album of the Weekとして取り上げられました。私が確認した限りでは、日本人アーティストでNPRにアルバムとして大きく取り上げられた例は、坂本龍一さんや上原ひろみさんなど、世界的に活躍された方でした。大変光栄なことです。

『Undeniable』『Flow』、そして最新作『self』。

『self』は、Naoにとって6作目のアルバムです。今見返してみると、前々作と前作ではライナーノーツを書いていませんでした。本人がたくさん発信してたという経緯もありますが、自分が作品を広めることよりも創ることに集中していたのかもしれません。

今回は久しぶりに、ライナーノーツとしてこの作品を振り返ります。プロデューサー、そしてA&Rとして何を考え、どのようにこのアルバムを作っていったのか。僕自身の視点から、何回かに分けて届けたいと思います。

この物語を語るには、14年前まで話を戻す必要があります。

活動15周年の一年前に

Nao Yoshioka Make the change project

僕たちの挑戦が始まったのは2012年。

「Make the Change」という一曲を皮切りに、世界を目指して歩き始めました。その前提は、14年間、1mmもブレていません。

Naoがアルバムデビューを果たしたのは2013年。ファーストアルバム『The Light』からでした。

当時、全編英語詞で作品を作ることに対して、周囲からは多くの疑問の声がありました。

それでも僕たちは、その声を押し切りました。あえてCDショップでは洋楽の棚に置いてもらい、日本国内だけを基準にしない活動を始めました。

世界を目指す。その前提だけは、一度も変わったことがありません。

来年、Naoは「Make the Change」から活動15周年を迎えます。そして今年の『self』と10月21日のLIQUIDROOM公演は、その大きな節目に向かう一年前。言うなれば、15周年への助走です。

日本という、ソウルミュージックの”シーン”と呼べるものがほとんど存在しないマーケットから、これほど長く世界を目指し続けてきた例は、2010年以降、多くはありません。

インデペンデントのアーティストが世界を目指すことは、今も決して簡単ではありません。マネジメントやレコード会社がアーティストを長期的に育てるスキームや投資は年々減り、メジャーレーベルでさえ契約数は少なくなる一方です。だからこそ、僕たちは自分たちの力で、この道を切り拓くしかありませんでした。

Naoの海外での活動を見て、これまで多くのプロジェクトからお声がけをいただきました。その一つひとつに答えたいという思いもありました。

それでも僕たちは、Naoに注力することを選び続けました。

世界を目指すことは長期戦です。片手間で進められるほど、簡単な道ではないと分かっていたからです。

機が熟した、といえる理由

前作『Flow』では、コロナ禍を経て本格的に世界での活動を再開しました。

ここまで積み上げてきたものを、数字で振り返ると。

  • 11カ国を巡るワールドツアー
  • YouTubeでのパフォーマンス動画、530万回再生
  • Blue Note New York、London Jazz Cafe、Java Jazz Festival、Capital Jazz Festへの出演
  • 日本人アーティストとして初のBillboard UACチャート32位

この一つひとつが、積み重ねられた土台の上に今回の『self』があります。

今回の作品では、Braxton Cook、Bilal、Devin Morrison、MXXWLL、Jamila Woods、Peter Cottontale、Sam Wills、Keyon Harroldという、世界の第一線で活躍するアーティストたちとのコラボレーションが実現しました。

でも、ここで一番伝えたいのは、「豪華な参加アーティストが集まった」ということではありません。

Naoが、彼らと対等な立場で作品を作るアーティストとして認識されるようになったこと。

それが今回、最も大きな意味を持っています。

有名な誰かと組めば、作品に箔がつく。以前の僕たちには、どこかにそんな発想があったのかもしれません。

でも今回、チームとしてその考え方を手放すことになりました。この経緯については、Vol.3で詳しく書きます。

対等な関係でしか、本当にいいものは生まれない。

今回のアーティストたちは、日本人だからでも話題性があるからでもなく、純粋にこの作品に共感し、対等な関係の中で音を重ねてくれました。

そこまで来られたという実感が、今回は今までとまったく違います。

スモールチーム、ビッグドリーム

SWEET SOUL RECORDSという、決して大きくはないインデペンデントのチームで、ここまでたどり着けたこと。これは僕たちにとって、一つの大きな到達点です。

メジャーレーベルの力を借りずに、世界の第一線で活動するアーティストたちと、対等な関係で作品を作れるところまで来た。これは僕自身にとっても、大きな転機になったアルバムでした。

長年、海外の制作現場に立ち会い、トッププロデューサーたちと議論を重ねる中で、僕自身もようやく、自分を音楽プロデューサーだと認められるようになりました。この作品は、Naoだけでなく、僕たちチーム全員にとっての転機でもあります。

『self』というタイトルには、Naoがここ数年向き合い続けてきたテーマが詰まっています。次回は、そのタイトルに込めた意味と、彼女がシンガーからシンガーソングライターへと変わっていった過程について書こうと思います。

世界を目指し続けてきた彼女が、なぜ今、自分自身と向き合う必要があったのか。

次回に続く。

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